忍者ブログ
11.24  
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

+1
「空閨」(毛利)

企画サイトさんに提出していた時のタイトルは「秋の海にうつれる月を立ちかへり波はあらへども色は変はらず」でした。若干の修正が入っています。
個人的に漢詩は勉強したいと思っていたので、これを書く際に一気に岩波文庫の『唐詩選』を揃えて流し読みしました。おもしろいんだけど全部じっくり読む暇がなくてそのまま放置です……。悔しい。ゆっくり勉強ができる時に一篇ずつ読んでいきたいなあ。

話中に引用した詩歌の現代語訳を続きに。和歌の解釈は結構強引というか、意訳なのでご注意ください。

「秋興一」
玉なす露は、楓の林の紅葉をしぼませ、散らせてゆく。巫山・巫峡のあたりには、静寂で厳粛な秋の気が立ちこめている。揚子江の川浪は、天までもとどけと湧きかえり、とりでのあたりの風雲は、地をはうばかりに低く、暗い影を落とす。菊のくさむらが花を開くのを、私は放浪のうちに、これで二度見ることとなった。去年、菊を見て流した涙の思い出が、新しい涙とともに私の胸をふさぐ。ただ一そうの舟を、私はひたすらに岸へとつなぎとめている。その舟に寄せるのは、ふるさとを思う心なのだ。――冬着のしたくが始まる季節となった。あちらでもこちらでも、針しごとに追い立てられている。暮れ残る白帝の城の高くそびえる下、夕べのきぬたの音ばかりが、せわしげに伝わって来る。

「吹笛」
笛のしらべが伝わって来る。秋の山の、風も月も清らかにさえわたる中で。吹いているのは誰か。聞くもののはらわたをかきむしるような、悲しい響きを巧みにも吹き鳴らすとは。風は律のしらべ、呂の響きをゆるがせて、みごとな調和を作り出す。月は目路をさえぎる山なみの稜線にかかって、いくつかの峰を明るく浮き立たせる。いかにもこのしらべには、えびすの兵士どもを夜中に北へと退却させるだけの哀切さがこもっている。奏でられる武陵のひとふしには、遠い南の地方へと遠征した人の心もしのばれる。――わがふるさとの庭に立つ楊柳は、いまごろ、葉をふるい落としているはずだ。その葉が、折楊柳の曲につれて、憂愁に満ちた私の胸の中にことごとくまた生い出でるとは、いったい何としたことか。

歌の意訳にいたる経緯
直訳では話に合わなかったので捻じ曲げてやりました。藤原深養父ゴメン。『旺文社 古語辞典第八版』をフル活用。
海:広く水をたたえている所。海・海洋・沼・湖など。
月:1.月。特に、秋の澄んだ月。
月立つ:1.月が出る。月がのぼる。2.月が変わる。月が改まる。
立ち返り:1.繰り返し。2.(多く返事の場合に用いて)折り返し。すぐに。3.反対に。今までとは逆に。4.昔にもどって。もとにもどって。
立ち返る:1.(もとの場所に)もどる。引き返す。(昔に)たちもどる。よみがえる。2.繰り返す。
なみ[波・浪]:1.水面に生じる起伏。波。5.波乱。騒ぎ。ごたごた。6.消えやすいもの、はかないものにたとえていう語。
色:12.情趣。心の趣。
こんな感じで単語ごとに意味を拡大解釈したので、つぎはぎの訳に。

最後の部分について(ネタバレ・反転でどうぞ)
女が去った後にも変わらぬ姿を見せる秋の庭を見ると、女を思い出す毛利
月のきれいな夜には離れを訪れて一人、笛の音や華の道を懐古しつつ水面に映る月を見ている、という裏設定あり
PR
< 2024/11 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30  >
<<  >>

忍者ブログ  [PR]